「なぁ、あんたは知ってたのか?」
「…いや、知らなかった。もしかしたら、と考えたこともなかったよ」
改めて知った自分の真実。俺の家族。知らないほうがよかったかもしれないと鈍い頭でただ思った。あれほど知りたいと思っていた答えの詰まった箱がようやく見つかって、当たり前のように鍵を差し込んだらそれはパンドラの箱だった。
喉が渇いてうまく呼吸ができない。なんで、どうして。そんな意味の無い問いばかりが頭の中を駆け巡る。こんなときでさえ自分のプライドが取り乱すなんてことを許さない。落ち着け、落ち着けよ。大丈夫だ。なにが?いや、違う。俺は、俺は…。
「…間違ったのか?」
間違ったのだろう。何が間違いだったんだ。オッサンと出会ったこと、好きになったこと、俺が生まれたこと。
わからない。足元が、世界が揺らぐ。なんで、どうして。そんなこといまさら問うたところで何も変わりはしないのに馬鹿みたいにその言葉だけが頭の中を廻るのだ。
「ねぇ、ユーリ君」
近くにいるはずなのにレイヴンの声が遠くで聞こえる。
この記事にトラックバックする